リッカルド・ムーティ。オーマンディの後を継いでフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に就任した(1980年から1992年)。オーマンディ/フィラデルフィアは大好きな組み合わせだったが、意外と録音には恵まれていない。もちろん名盤はあるが。ホールに恵まれていなかったという話もあり、近年は、Kimmel Centerに新しい拠点となるホールが造られた。私はこのホールで『新世界』を聴いているが、なんともとろけるようなビロードのようなサウンドである。
紹介するアルバムは、ムーティ/フィラデルフィアのレスピーギのローマ三部作である。録音は、1984年、Memorial Hall,Philadelphiaであり、こちらのホールは知らないが少なくとも録音は秀逸である。レスピーギは、(1879~1936年)近代イタリアの生んだ大作曲家であるが、ローマをこよなく愛した人であったそうで、最高の作品とされるローマ三部作「ローマの松」、「ローマの噴水」、「ローマの祭り」は、彼のローマへの思いが最高の交響詩として結晶化したわけである。調べてみてはじめて知ったが、レスピーギの師匠はリムスキー・コルサコフで、「ローマの松」冒頭のボルジア荘の松の出だしは、なるほどと思わせる華やかなオーケストレーションである。
オーマンディを継承したムーティもイタリア人であり、この組み合わせによる最上のカップリングであるとは言える。ムーティの指揮者としての現在は、カラヤンを思わせるような突出した存在になりつつあるが、現代の商業主義的音楽の中においては、象徴的な存在かも知れない。
一方でフィラデルフィア管弦楽団のサウンドは、オーマンディによって確立された華麗なフィラデルフィアサウンドと形容されるが、実態は、個人の技量(名人)、最高の弦楽器(ストラディ、ガルネリ)、完璧なアンサンブルによる甘い金管の響きといった数々の特徴がなし得たものであり、こうしたオーケストラは指揮者にとって最高の素材であろう。その現代版が小澤/サイトウキネンかも知れない。
さて、ローマ三部作であるが、やはり「ローマの松」が傑作である。ローマの松では、カタコンブ付近の松、アッピア街道の松が特に人気があるが、これぞ交響詩といった交響詩の傑作である。私としては、カタコンベのトランペットのソロメロディが心に残る。
近年クラシック音楽の人気低下が叫ばれるそうだが、単に名曲だからといった紹介ではない、音楽が生まれた背景や楽しみ方などにも工夫が欲しいところだ。クリスマスのくるみ割り人形、年末の第九(これは日本だけだが)、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートなど、定番もよかろうが、新しい「プログラム」が期待されるところだ。