トゥーツ・シールマンスを知ったのは30年以上も前のサントリーのCFからだ。小舟の上でハモニカを吹く姿、そんなCFだったように記憶するが、その時のプレゼンスはすごかった。ハモニカは日本の音楽教育の中では欠かせない楽器だったが、楽器そのものは教育用に作られた代物だったので、彼が手の中に隠すように持ち吹くその姿はとてもそのようなハモニカという存在ではなかった。
ハモニカは多種多様に存在するが、ソロイストが使うのは、クロマチックタイプと呼ばれるものでスライドレバーで半音階(クロマチック)を演奏できる機構である。スライドを素早く操作することで驚くほど速いパッセージも吹けるしトレモロだって可能だ。
トゥーツ・シールマンスの存在は貴重だ。なにせ彼以外のジャズ・ハーモニカの奏者は見あたらない(スティービーは別格だけど)。数年前正月にトゥーツ・シールマンスはブルーノート東京でライブを行った。2年続けて行ったのだが、二度とも足を運んだ。ずーと憧れていた奏者だったので、なんともいえない素晴らしい気持ちになった。とても優しいおじいちゃまという雰囲気で癒されてしまったのだが、アンコールで彼が演奏したのは、「この素晴らしき世界」だった。そして、彼がそっと涙を浮かべて話してくれたのは、彼がデビューしたのは16歳の頃でサッチモと競演したのが自分のキャリアーの始まりだったと。そして、天国で私の演奏をきっと聴いてくれるだろうねと。
彼はピーターソンとの競演もいくつか存在するが現在入手できるのは、モントルー’77のライブ盤だけのようだ。スリリングが彼の演奏をぜひ聴いて欲しい。
紹介するのは、この一枚でトゥーツ・シールマンスと彼のハモニカのすべてを堪能できる、ベスト盤。80年近いキャリアをWMWで検索して楽しんで欲しい。